小出裕章さん講演会
昨日の午後、宇部市渡辺翁記念会館で、小出裕章さん(京都大学原子炉実験所の助教授)の講演会がありました。 同じ頃、私は防府でスリング講習会を開催していました。
当日は、立ち見が出るほどの、席数の120%の1,500人以上もの来場があったそうです
事前に知人にお願いしていたところ、たっぷり書いて来てくれました。
以下、知人が送って来てくれた文章を引用しながら(文旨そのままに)箇条書きにしてみました。
がれきの受け入れについても、最後の質疑応答でお話があったようです。
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講演のタイトルは「どの子も幸せになるように今、知ってほしいこと」とあり、特に、子供たちを被曝から守りたい、安全に暮らせるようにということがテーマでした。
まず冒頭では、宮沢賢治の「農民芸術概論綱要」より、
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉を引用。
「たくさんの命が根付く稀有な星」である地球の誕生が46億年前
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人類が誕生したのが400万年前
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人類が道具を使えるようになったのが10万年前
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農業をして定住を始めたのが1万年前
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そしてたった200年前に産業革命が起こり、人類は膨大な量のエネルギーを使うようになった
地球が誕生してからこれまでたくさんの生物が生まれては絶滅するというサイクルを繰り返してきたが、人間が膨大な量のエネルギーを使うことで、20世紀に入り、絶滅する生物の種類も桁違いに増えてしまった。
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そして、原子力の話。
2005年アメリカのBEIR-Ⅶという報告では、被曝のリスクというものは直線的に存在し続け、しきい値はない。要するに、どんな微量な被曝でも病気などのリスクは避けられないということ。
原子力発電というものは火力発電などと同じで、簡単にいうと、湯沸し装置である。お湯を沸かし蒸気を発生させてタービンを回して発電をする、ただそれだけのこと。
広島原爆の事故ではたった800gのウランが燃えましたが、原子力発電(100万kw・1基)は一年間に1トンものウランが必要である。
チェルノブイリ事故ではたった1基の爆破で広島原爆の800発分の放射性物質が流出し、40万人もの人々が避難し故郷を失い、700km先まで放射性管理区域(一般の人々が立ち入ることを禁ずるもの)レベルの汚染が及んだ。
ソビエト政府が定めた強制避難地域以外の管理区域には、今でも放射能に汚染されながら人々は住み続けている。
これに対して、福島の事故では1号機~4号機まで全てが壊れた。特にひどいのは4号機の建物の崩壊で、この中にあるの使用済み燃料プールには、広島原爆4000発分の使用済み燃料がある。
このプールがもしも大きな余震などで壊れたら・・・。ただただ、そうならないことを願うのみ。
野田総理は昨年末に、事故終息宣言を出したが、それはとんでもないことである。まだ、なにひとつ終わっていない。
更に、政府は事故で亡くなった人はいないと言い切っているが、事故が起こった直後に近くの病院に入院されていた患者さんが45人も亡くなり、さらに避難先ではお年寄りもたくさん亡くなり、自殺をされた農家の方や牛や馬などの家畜、飼い犬などのペットなど数え切れない命が失われてしまった。更に、今でも野放しにされた家畜やペットは被曝しながら生き続けている。
政府がIAEAに提出した福島の事故に対する声明では、大気中に放出したセシウム137の量は、広島原爆の170発分であると言っているが、これは政府が出した過小評価であると考えている。
勿論、大気だけでなく海へも同じように落ちているはずである。
日本でも放射能管理区域は福島だけでなく、東京や埼玉、千葉などにまで及んでいる。更に「法治国家」である日本、もともと日本では一般の人々に対しては1ミリシーベルト以上の被曝をしてはならない、1㎡辺り4万ベクレルを超えるいかなるものも管理区域から出してはならないと法律で定められていたが、政府は福島の事故後、この法律を覆した。
「汚染地に残れば健康が冒される、汚染地から去れば生活が崩壊し、土地が失われてしまう。」
昨年の3月11日以降、世界は変わった。
人々が普通に生活する場所が管理区域以上に汚されてしまった。全ての土地・食べ物・水・下水は濃度の差はあれど、汚れている。
私たちがこれからしていかなければならないことは、「責任を取らせる・あるいは責任をとる」こと。
組織としてだけでなく、個人の責任を明らかにし、その重大さによって責任をとらせる。そして自分の責任も自分でとろう。
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【小出さんの一番の願い】
①子供に被曝をさせない
理由・・・1.子供には原子力を選んだ責任がない。
2.子供は放射線に対する感受性が強い(細胞分裂が盛んなので)。
②1次産業を守る
いま国がやろうとしていることは、基準値を決めてそれを超えたものは排除する。それ以下なら安全ということだが、例えば、食品に対する500ベクレル、これはとんでもない数字である。
政府は、汚染の実態を隠そうとしている。私たちは、それを暴かなければならない。
農家の人々は捨てられると分かっている作物を作り続けることが出来るか?私は出来ないと思う。
事故が起こってしまった後、程度の違いはあれど、放射能を受けていない作物はない。私たちは、その現実に向かい合わなければならない。
自己責任を果たすという意味で、東電は正確に食品や作物に対する汚染度合いを測定し、公表すべき。それを私たちが判断していくしかない。
基準値などで線引きをするのではなく、食品の汚染を徹底的に調べる。そして猛烈に汚染された食品は、原子力を進めてきた人々に食べさせる(東電社長や政府の人間に)。
残りは汚染度合いごとに感受性の低い高齢者の方々など、60禁(60歳以上でないと食べてはダメという意味)、50禁、40禁・・・などと表示して、子供には絶対に汚染の少ないものを食べさせること。
給食なども同じ。そうしていくしか、他に方法はない。覚悟を決める。大地は、汚れてしまっている。
最後にまた宮沢賢治さんの言葉から、
「個性のすぐれる方面に於いて 各々止むなき表現をなせ」を引用。
一人ひとりが個性を生かして自分の責任をどう果たすのか、個性を発揮し、湧き上がる思いを発すれば、原子力はスグにでも止まると思うと。
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講演会後に、事前に提出されたアンケートの中から、司会者の方がいくつか質問があったようです。
【質問】がれき問題について。
【小出さんの回答】
原則として、放射能は拡散させない、薄めない、広めない、そしてコンパクトに管理が基本。
少なからず、汚れてしまっているがれきを全国にばら撒く、これだけは、絶対にしてはならない。
政府の今やろうとしていることは、がれきを普通の焼却施設で燃やす→濃縮された灰をそれぞれの自治体で埋めること。しかし、これは間違いであり、それぞれで埋めてはならない。
取り残されたがれきは、現地で燃やして現地で閉じ込めるのが一番である。とはいえ、汚染地に住む子供たちもそのがれきにより被曝をしてしまっている、子供たちは何としてもでも守りたい。
そこで、がれき処理には、条件を付けなければならない。
①いま現在、使っている焼却施設で燃やすことは、ダメ。放射能を閉じ込めることの出来るフィルターをつける、そして取り扱いに関する知識のある人間に担当させること。
②焼却されて出た灰は元に帰す→東電の所有物であるのでそこに返す。福島の原子力建屋には、今後コンクリートでシェルターを作ることになるので、それに使ってもらう。余ったもので東電本社ビルを埋め尽くす。責任のある連中へ返すべき。心の底からそう願っている。
【質問】4号機の状態について。
【小出さんの回答】
一番状態が悪く、懸念されいる。燃料プールは傾いている。
広島原爆4000発分の物質を含んだ使用済み燃料が、そこに浸かっている。もしもプールが壊れたら、終わりであり、いまも危機状態にあることには違いない。燃料棒を安全に取り出すことが出来るのか?それは非常に難しいことである。
【質問】除染について。(東北から避難されてきた方からの質問で)私たちは、いつ帰れるのか?
【小出さんの回答】
汚れてしまった東北の地では、放射能は消せない。除染は出来ない、ただ「移染」するだけ。
子供たちがいる場所は、何としても除染が必要。でも学校や家だけでなく全ての場所が汚れてしまっているので、除染はムリである。
放射能が自然になくなるのを待つのみ。セシウム134は2年で半減、セシウム137は30年で半減。
これまで住んでいた人たちは別の場所で新しい人生を始める覚悟を持っていただきたい。
大変、悲しいことだが・・・・。
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昨晩のうちにメールを送ってくれた知人に感謝しながら、同時に、あ~やっぱり私がかつて(16年前に)田中三彦さんから聞いていたことと同じことを話されたのだなと思いました。
防府市長が、がれきの受け入れを表明していますが、それが、どういったことかをよく知って欲しいと思います。がれきの受け入れよりも、移住したいと考えている人たちの住む場所や働く場所を確保してあげることのほうが重要だと思います。
それはとても難しいことかもしれませんが、「がれきの受け入れ」というポーズよりも、ずーっと現実的に必要とされていることなのではないでしょうか。
ちなみに、こちらのレポートを送ってくれた知人は、3.11以降に、首都圏から山口に来られたママさんの一人です。子どもたちのことを考えて、家族での移住・・・。私も、あのまま東京に住んでいたなら、きっと、彼女と同じことを早々に決断していたように思います。わずかな揺れでも気になってしまうので。
地震大国が原発を持つことがどんなに恐ろしいことなのかを、16年前から聞いていましたので。
・・・ただ、現実に起こってしまうとは、想像だにしていませんでしたが。
※こちらの講演会の様子は、Ustreamでアーカイブがアップされています。
講演会前半(1時間42分)・・・http://www.ustream.tv/recorded/21183388
講演会後半(55分)・・・http://www.ustream.tv/recorded/21185477
(本文とは関係ありませんが) ラナンキュラス、つぼみの姿が、ちょっと芍薬っぽくありません?
こちらの花もまた、山口農業大学校さんが作られたものです。日持ちもするのでオススメです♪